役員報酬を決める3つのポイント~役員報酬はいくらが適正なのか~

~⏰️この記事は3分で読めます~

会社を設立したあとは役員報酬の金額を決める必要があります。

そんな役員報酬の金額ですが、一体いくらが適切なのでしょうか?

今回は「役員報酬の金額」について、具体的なシミュレーションも交えながら解説していきます。

この記事で分かること
✅️役員報酬とは?
✅️役員報酬の相場
✅️役員報酬を決める3つのポイント
✅️役員報酬の実際のシミュレーション
✅️役員報酬を支給する際の注意点

この記事を書いた人

公認会計士試験合格後、PwCあらた有限責任監査法人(現PwC Japan有限責任監査法人)の金融事業部へ入社。
会計監査・内部統制監査・アドバイザリー業務に従事。
監査法人退所後は会計コンサル会社に勤め、経理支援やシステム導入に従事し、経理現場の改善に務める。
その後、公認会計士・税理士として独立開業。

1.役員報酬とは?

役員報酬の概要

役員報酬の金額を決める前に、まず役員報酬とはなにか解説します。

役員報酬とは、株式会社の役員に支払われる報酬のことをいいます。

ここでいう役員とは、会社の重要な意思決定に関する役職を持っている人を指し、以下の役職を指します(国税庁HPより抜粋)。

✅️取締役
✅️執行役
✅️会計参与
✅️監査役
✅️理事
✅️監事
✅️清算人

給与との違い

従業員に対する給与との違いは、従業員への給与が労働の対価として支払われるのに対し、役員への役員報酬は労働の対価とは関係なく役員としての肩書や職務内容に対して支払われます。

そのため、役員の肩書や職務内容が重要なものであるのならば、役員報酬は高く設定される傾向にあります。

役員報酬の相場はいくら?

役員報酬の相場平均は会社規模によって異なる

そんな役員報酬ですが、実際の相場はいくらなのでしょうか?

国税庁が公表している『令和4年度「民間給与実態調査結果」』によると、資本金(企業規模)に応じた役員報酬の金額は以下のとおりです(P113~P117参照)。

資本金に応じた役員報酬の年平均金額は以下のとおりです。

資本金2,000万円未満:6,470千円
資本金2,000万円以上:9,529千円
資本金5,000万円以上:12,326千円
資本金1億円以上:12,304千円
資本金10億円以上:17,853千円

基本的に資本金の額が大きくなるにつれて、役員報酬の金額も比例して大きくなる傾向にあります。

あくまで一例に過ぎませんが、客観的なデータとして役員報酬を設定する際の参考としてご活用くださればと思います。

.役員報酬決めるための3つのポイント

役員報酬の金額を決めるためのポイントは以下のとおりです

法人税、所得税、社会保険料の観点
役員の功績や生活費など個人的な観点
事業承継や相続の観点

順番に解説します。

①法人税、所得税、社会保険料の観点

1つ目は法人税、所得税、社会保険料の支払金額です。

役員報酬の金額によって、これらの支払金額が変わってきます。

具体的には

✅️法人税:会社の利益が大きいほど増える(=役員報酬の金額が小さいほど増える)。
✅️所得税:個人の給与所得が大きいほど増える(=役員報酬の金額が大きいほど増える)。
✅️社会保険料:個人の給与所得が大きいほど増える(=役員報酬の金額が大きいほど増える)。

という関係がありますので、役員報酬を設定する際には念頭にいれると良いでしょう。

役員の職務内容や生活費など個人的な観点

先ほどは税金や社保の金額のみを考慮しましたが、実際は個人の生活費も含めて役員報酬の金額を考えるべきです。

もし役員報酬が少なすぎて、後で会社から個人へ追加報酬を振り込んでも、原則その金額は損金計上できない(≒税務署に費用として認められない)ため、所得を圧縮できず税金面で損することになります。

また、銀行からも役員報酬が異常に少ないと、その金額で生活できる根拠を求められる場合があり、生活できないと判断されると融資の評価に悪影響を与える可能性もあります。

また、役員の肩書や職務内容が客観的に重要ならば、役員報酬は高く設定されます。

逆に言えば、職務内容に見合わない役員報酬の金額を設定すると、税務調査で不相応だと指摘が入る可能性があるので、ご注意ください。

事業承継や相続の観点

もし事業継承や相続を考えている方は、「役員報酬と会社の価値の関係」という観点を持つといいでしょう。

よくあるパターンとして、役員報酬を少なくすることで会社の手残りとなる利益を増やし、会社を成長させようとする経営者の方がいらっしゃいます。

ここで気をつけたいのが、「直近で株の引き渡しを通じた相続や事業承継の予定があるか」です。

例えば、もしあなたが亡くなって、あなたの個人財産を家族に相続するとしましょう。

あなたが会社から役員報酬(=現金)をあまり受け取っていなかった場合、あなたの会社には利益が残り、成長(=株価が上昇)することになります。

そうすると、家族に対する相続財産の大半があなたが持っている価格のつり上がった株式になり、現金として相続される分が少なくなります

すると、結果的に家族は現金が相続されない一方で高騰した株式に対する相続税が払えず、相続税の負担が大きくなってしまいます

「相続税が払えないなら株式を売ればいいだけでは?」と思うかもしれませんが、非上場の株式は上場株式と比べ自由な売買が難しく、売却する手続も面倒です。

そのため、株の譲渡まで視野にいれるのであれば、株価対策という意味で事前に役員報酬を引き上げておくという選択肢も生まれます。

4.実際のシミュレーション

ここで、実際に役員報酬のシミュレーションしてみましょう。

~ケーススタディ Aさんの場合~

【Aさんのプロフィール】
・年齢:37歳(介護保険第2号被保険者の対象外)
・都内で事業を営んでいる
・会社利益:1,000万円(役員賞与&社会保険料は考慮外)
・1人会社で役員報酬の受取人は代表取締役のAさんみ
・東京都
・配偶者や子供など扶養する家族なし

このAさんが実際に支払う税金と社保合計を表したグラフが下記です。
縦軸が税金と社保の合計金額、横軸が役員報酬(700万円までを50万円ごとに算定)です。

グラフを見てみると、役員報酬が200万円になるまでは税金&社保合計が減少傾向にありますね。

これは、所得税において、「給与所得控除」という給与所得上のみなし経費や、所得から差引くことができる「所得控除 」があることで、一定額まで個人の税金がほとんど発生していないからです(配偶者や扶養親族の有無で一定額は変わってきます)。

そのため、この範囲においては所得をなるべく個人へ移すことで、税金の負担が減ることになります。

このケースにおいて、最も税金&社保の金額を安く抑えることができる役員報酬の金額は200万円で、税金&社保の合計は約250万円です。

一方で、最も税金&社保の金額が大きくなってしまう役員報酬の金額は700万円で、税金&社保の合計は約330万円です。

両者の差は約80万円となり、設定額次第ではここまで差が出ることになります。

.役員報酬を支給する際の注意点

ここでは、役員報酬を支給する際の注意点について解説します。

役員報酬は適切な手続きを踏んだうえで支給しない場合、損金として計上できず、税金面で損する可能性があります。

役員報酬を支給する際は、以下の点に注意してください。

①役員報酬の月額は1年を通して原則変更することができない。
②株主総会で決議をとり、議事録を保管する。

①役員報酬の月額は1年を通して自由に変更することができない。

役員報酬の月額は、基本的に1年を通して自由に変更することができません。

そのため、役員報酬を設定したあとに個人の生活面などで不都合が生じても、役員報酬の金額を変更できません。

役員報酬の月額の変更は、原則として事業年度開始から3ヶ月以内かつ年1回のみです。

例えば3月決算の会社であれば、4月〜6月の間で変更手続を行う必要があります。

以上のように、役員報酬の月額は基本的に自由に変更することができません。

ただし、以下のような特殊な事情に限り、変更することができます(以下、国税庁HPより抜粋)。

①その事業年度においてその法人の役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これらに類するやむを得ない事情
②その事業年度においてその法人の経営状況が著しく悪化したことその他これに類する理由

もし上記のような事情があれば役員報酬の変更余地が生まれますので、念頭に入れておくのが良いでしょう。

②株主総会で決議をとり、議事録を保管する

役員報酬の金額を設定するためには、株式総会で決議を取ったうえで、議事録を保管する必要があります。

役員報酬に関する議事録は税務調査で提出する可能性がある書類でもあります。

そのため、たとえ1人社長の場合であっても、きちんと役員報酬の金額決定に関する議事録を作成し、保管するようにしましょう。

6.弊事務所のご紹介

弊事務所では役員報酬の設定金額を通じた税金シミュレーションも行っておりますので、簡単にご紹介させていただきます。

お客様の手間を徹底的に省いた業務設計

当社の記帳代行サービスは、忙しい事業主様向けに特化して設計されています。

サービスの最大の特長は、全ての業務がオンラインで完結することです。

記帳代行を依頼する場合、紙の請求書や領収書はスマートフォンで撮影するだけでOK。撮影した画像をクラウドにアップロードいただくだけで、後の記帳は全て迅速に行います。

文書のデジタル化からデータ入力、さらには分析まで、一貫して高品質なサービスを提供します。

もちろん、希望のお客様に対しては対面での面談も柔軟に対応していますので、お気軽にご相談ください。

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弊事務所ではご契約されるお客様にfreee会計の導入をお願いしております。

顧問先様の会計ソフトをfreeeに統一することで、事務所内の作業内容の効率化を通じた顧問料金削減や後述する毎月の経営レポート発行を可能とし、お客様へ還元しております。

freee様よりfreee会計エキスパートの認定を受けておりますので、freee会計の導入や設定を含めた支援も可能としております。

毎月の経営レポートを通じた分析&融資に強い決算作りの支援

みなさんは「コックピット経営」という言葉をご存知でしょうか?

コックピット経営とは、企業の経営者が経営の現状を一目で把握できるように、重要な経営指標やデータを一画面に集約して表示する手法です。航空機のコックピットのように、多くの計器が一箇所に配置されていることからこの名前がつけられています。

弊事務所では記帳代行や申告のみならず、売上や資金繰りを可視化したレポートの発行を毎月おこなっており、デフォルトで顧問業務に付属します。

レポートには銀行が重視するような指標もリアルタイムで追うことができますので、銀行の融資対策を早期に行えるのと同時に、迅速な経営判断が可能になります

仮にこういった対策をせずに決算を迎えてしまうと、決算書に融資へ悪影響を及ぼす要因が残ってしまうことになるため、こういった対策はタイムリーに財務状況を追いながら、対策をすることが非常に重要です。

~対策例の一部をご紹介~

✅️役員貸付金の解消:役員貸付金の存在は、銀行から個人資金と会社資金が混合しているとみなされ、融資に悪影響を及ぼす危険がございます
✅️デッドエクイティスワップを通じた役員借入金の資本化:膨らんだ役員借入金は負債比率を増加させる要因となるため、融資を見据えるのであれば資本化などを通じて解消の余地がございます
✅️経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)の資産計上:掛け金を損金に落とさず資産計上し、別表上で減算処理することで、節税対策をしつつ、これまで簿外となっていた資産の存在を示し、銀行への評価を上げることができます。(※申告する上で必要となる明細書は弊事務所で作成いたします)
✅️PL計上区分の見直し:売上高に計上できるのに営業外収益へ計上している金額がないか、特別損失に計上できるのに販管費へ計上している金額がないかを精査することで、企業の経常収益力の見え方を改善し、銀行評価の向上に繋げることができます。

こちらのレポートはネットを通じてスマホからの閲覧も可能ですので、出先から気軽に自身の経営状況を把握することが可能になります

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顧問業務の内容

顧問業務に含まれるサービスは以下のとおりです。

✅️会計税務に関する質問受付
✅️現状の問題点や今後の方向性について面談・決算報告(頻度はお選びいただけます)
✅️決算申告対応
✅️経営レポートの作成
✅️専門家紹介
✅️クラウド会計の導入支援
✅️節税提案

まとめ.役員報酬は会社の状況に合わせて適切な金額を設定しよう

いかがだったでしょうか?

役員報酬の金額は実際の会社の状況に合わせて決めるがおすすめです。

弊事務所でも、下記の画像のように役員報酬と税金&社保をシミュレーションしながら、顧問先のお客様の役員報酬の設定を提案しています。

初回の相談は無料ですので、興味があればお気軽にお問い合わせください。

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お客様のご要望をお伺いします

この記事を書いた人

公認会計士試験合格後、PwCあらた有限責任監査法人(現PwC Japan有限責任監査法人)の金融事業部へ入社。
会計監査・内部統制監査・アドバイザリー業務に従事。
監査法人退所後は会計コンサル会社に勤め、経理支援やシステム導入に従事し、経理現場の改善に務める。
その後、公認会計士・税理士として独立開業。

最終更新日:2024年7月27日

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